●ヒートアイランド対策の切り札?
今年の夏は特に暑い日が続きました。激しい雨や雷も多く、異常気象という言葉が現実味を帯びてきたようです。そして、コンクリートジャングルの都市の夏の不快感は、年々増すばかり。その原因のひとつがヒートアイランド(都市の高温化)現象です。地表をコンクリートやアスファルトで覆われた都市部では、水分の蒸発がほとんど起こらないために地表面の温度が上昇し、さらにビルやクルマから排出されるエアコンの人工熱も加わって夜間になっても気温が下がらない状態になります。こうした現象への対策として、今注目を集めているのが「屋上緑化」です。
オフィスビルや学校などの屋上の空きスペースを利用して樹木や草花、芝生などを植え、人工的な緑地を造ろうという試みです。植物の持つ蒸散作用や緑陰による効果、さらに土壌に含まれる水の蒸発により熱が奪われる作用などを相乗的に利用して都市の温度を下げようというのです。一説によると、夏の未緑化地の温度が60℃近くまで上がっているのに対して、緑化の部分は30℃前後で安定しているとか。つまり、自然の恵みがもたらす建物の外断熱効果と言えます。屋上緑化をすると、「最上階の部屋が涼しくなった」「クーラーをかけることが少なくなった」という声が多く聞かれるそうです。もちろん、冬は逆に温かくなるわけで、省エネにも大きな効果が期待されています。
●癒しの効果や大気の浄化作用も
最近では、小学校の屋上を緑化のモデルとしたり、新築マンションが屋上庭園を新しい魅力づくりに取り入れたりと、屋上緑化を身近に見る機会が増えてきました。屋上緑化が普及し始めたもうひとつの理由は、緑の持つ癒しの効果が注目されているからです。緑地が少ない過密な都市空間で身近に樹木や草花と触れ合うことは、日頃のストレス発散に大いに役立ちます。また自然と親しむことで、子供たちの環境教育や情操教育にもよい影響があると言われています。
介護福祉施設などでも、緑のもつこの効果に着目し、屋上にサンデッキやベンチ、テーブルなどと組み合わせて庭園を造り、季節季節の憩いの空間を演出しているところも見られます。また都市全体として考えた場合、屋上緑化は大気を浄化したり、騒音を和らげたり、また雨水の地表への流出を緩和するなど、さまざま効果をもたらしてくれるのです。
●屋上緑化の普及には技術も一役
屋上緑化は最近のことのようですが、歴史的にはかなり古くから造られていたようです。世界最古の屋上庭園として有名なのは、古代メソポタミア文明の紀元前500年に造られた空中庭園です。時の王様ネブカドネザルが、緑豊かな故国を偲んでふさぎこむ王女アミュイティスのために造った7層の巨大建造物がそれで、漆喰で防水され、ユーフラテス川からポンプで水を汲んだそうです。
最近、屋上緑化が普及してきたのには技術の進歩もあります。これまでは、屋上に庭園を造る時には土を入れるのでどうしても重くなり、安全面や建築コスト面で問題がありました。しかし最近では、軽量人工土壌の開発や植物の根が入らないような防根性を備えた防水材の開発が進み、屋上緑化の可能性は飛躍的に広がっています。行政側の促進策や補助金なども普及を後押ししているようです。東京都では、2001年4月に改正自然保護条例を施行し、敷地面積1000平方メートル以上の民間建築物を新改築する際には、利用可能な屋上面積の2割以上を緑化するように義務づけています。さらに公共工事の削減で受注が減っているゼネコンも、緑化ビジネスへの取り組みを強化しています。すでに、屋上だけでなく壁面も緑化できるシステムを開発しているゼネコンもあります。こうした屋上緑化への関心の高まりは、都市住民の自然への回帰現象と言えるかもしれません。地球環境を救うだけでなく、現代人の疲れた身体と心までも癒してくれる土と緑のパワーに期待したいものです。 |
コンクリートで覆われた都市部の高温化が年々深刻になっています。その原因のひとつは「緑地の減少」。そこで、使われない「屋上」を緑地として活用しようというわけです。
アクロス福岡のステップガーデン。隣接する天神中央公園の緑地との連続性や景観まで考慮された階段状の屋上緑化。
土や草花と触れあい、育てることはそれ自体が楽しみでもあり、現代人にとってはストレス解消にもつながりますね。
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