“花粉症”をきっかけに農業を志す
「たった1日で野菜が生長している。“生きている”と実感する瞬間ですね」と話す近藤さんは、夢多き農業青年といった印象。わずか数ヶ月前まで技術系サラリーマンだったとは想像できません。畑ではナスやキュウリが収穫の時期を迎えていました。農薬を使わないから虫は多いものの、「害虫を食べる益虫もいるので、作物の害には直結しない」とあまり気にしません。「どうです、1本」。近藤さんが差し出したもぎたてのキュウリは、甘みもえぐみもしっかりしていて野性的。懐かしさを感じさせる味覚です。
近藤さんが農業に関心を寄せるようになったのは、10代で発症した花粉症がきっかけです。なぜ花粉症が起こるのか。食物とアレルギーの関係を知るにつれ、身体に良い食べ物を作りたいと思うようになります。そして行き着いたのが有機無農薬栽培でした。「身体で覚えたい」と、1年ほど前から経験者の元へ通い始め、退職後は毎日、畑に出て研修を重ねています。
畑の土はほくほくした黒褐色の顆粒状。堆肥には、温床に使った牛糞とソバ殻を流用。また緑肥も青々とした葉を茂らせていました。肥料にはハトムギの殻、モミ殻、ソバ殻などを3カ月に1度施します。「2週間前に大豆の種を播いたんです。今日はその土寄せ作業でした。収穫が今から楽しみ」と顔をほころばせます。
夢は自分の店で対面販売
近藤さんの当面の目標は「失敗を繰り返しながらも、消費者に喜んで食べてもらえる品質と量を目指す」こと。そして、いずれは店を持ち、自分が生産した米や野菜を対面販売するのが夢です。生産者の顔が見える農業を大切にしながら、その歓びやたいへんさ、食物の重要性を伝えたいと考えるからです。
さて近藤さんの花粉症ですが、近年は症状が軽くなったそうです。その秘訣を次のように話してくれました。「自分と同じ環境、つまり生活圏内で育った食べ物がいちばん身体になじみます。また魚は頭から尾まで、米なら玄米というように、全体を食べるといいですよ」。
サラリーマンから一転、自然を相手に汗だくの農作業。この環境もまた、近藤さんの身体に心地よい変化をもたらしているのかもしれません。