OREC梨農家 福岡
中村裕さん

梨農家 中村裕さん
梨農家 中村裕さん

進化する栽培方法

梨を作り始めたのは33年前からで、僕で3代目になります。梨畑の広さは2.2haで、オーレックの機械は13年前頃から使っています。たまたま新機種の試乗会をこの畑でやって、根元まで綺麗に切っていくのを見て、びっくりしました!「ガビーン!!」って、本当に100年来の恋人にあったみたいに!そこで「よし!買おう」ってなりました。

梨の栽培は、まず初めに3月末から4月頭にかけて白い花が頭の高さに一面咲いて、真っ白になります。梨は自分の花だけでは実にならないので、他の品種の花粉をその梨のめしべに乗せて人工授粉させてやらんといけないんです。

元々のやっていた木の植え方は、3、4年しないと実がなり始めないんですけど、今やっているジョイント栽培でやると、2年目から実がなり始めます。
またジョイント栽培は、木と木を一直線に接ぎ木で繋いでいく方法です。ずっと木を繋いでいってるので、途中でその根を切っても他の養分で繋がってるので、2本目の木が隣の面倒まで見てくれるんです。不思議ですね。
これは新しい栽培方法なんですけど、一応、個人の梨のジョイント栽培では僕のところが日本一の面積なんです。
全国から視察に来られます。

梨農家 中村裕さん

お客様の顔を思い浮かべながら

作る時に気をつけることはお客様の顔を思い浮かべながら作業することです。
僕のところは、木の上で完熟した梨だけを収穫します。というのは僕らは販売先が市場じゃなくて、お客様に直接届ける販売が多いからです。

直販をしない場合は、どうしてもスーパー相手や市場相手になります。市場に出すってことは日持ちがしないので、ちょっと青めで収穫しないといけないんです。青めっていうことは糖度がそこまで高くない。梨は収穫した後は水分が抜けていくだけで、甘さや糖度が上がるとかは無いんです。

僕らのものは2〜3日のうちに販売するので、出来るだけ木の上で完熟したものを収穫するんです。僕らはそのことを樹上完熟と呼んでいます。だから「こんな梨初めて食べた」とか言われるお客さんはいます。せっかく手塩にかけた梨が、相手に値段を決められたら悲しいことで。出来るだけ、自分達で値段が決められるような販売がいいかなっと思ってます。

何よりも大事なのは葉っぱ

台風の被害で梨が足の踏み場もないくらい落ちた年もありました。
台風があると、みなさんは梨が落ちて大変だったですねって言われるんですけど僕らは葉っぱが強風で飛んでしまうのが1番怖いんです。
というのは平成3年に17号、19号っていうものすごい台風が来た時に、梨の葉っぱがほとんど飛んでいってしまいました。
9月27日に台風が来たんですけど、10月20日頃の秋には花が咲いてしまったんですよ。
来年の春に咲くべき花が狂い咲きをして。10月のうちに花が咲いたら、次の年の春はもう咲かないんです。
そしたら次の年まで、実がならないということです。それだけ葉っぱが落ちたら、完全に木が回復するまで3年はかかります。
もう実が落ちるのは仕方ないなってなるんですけど、それが嫌です。台風が梨食いにきたなぁって泣くんです。黙ってね。

地域へ恩返し

僕の20代の若い頃は、地元の先輩方に育てていただいたのでその恩返しというのが僕の考え方なんですね。
自分だけ儲かろうっていうのは簡単なんですけど、やっぱり地域の中で生きていく上で、自分だけ抜け駆けっていうのはやりたくないんです。本当に今の売り上げを保つんであれば、今の面積の半分で自分で売れば出来ると思うんですけど。

あと新しい取り組みとして、ドローンを活用しています。
うちの部会の剪定講習会とかで枝の配置は下から見ても分かりにくいので、ドローンで空撮して、「おたくはちょっと枝が多すぎるよ」とか言って指導しています。ハウスのビニール被覆の準備にもドローンを活用しています。ドローンの導入により、今まで見ることができなかった園地の状況把握が可能になり、重宝しています。他県の生産者にも日本梨産業の発展のために惜しみなく技術はオープンにしています。

梨農家 中村裕さん